ICWES19 参加報告

ICWES(International Conference of Women Engineers and Scientists)は1962年アメリカのニューヨークで第1 回が開催されて以来、ほぼ3 年おきに開催されている。
世界各国から参加者が集まり、各国の男女共同参画やダイバーシティ&インクルージョンに関する現状報告やSTEMに関する活発な討議が毎回繰り広げられる。
19回目となる今年は、2023 年 9 月3日(日)から 9月 6 日(水)までニュージーランド・オークランドのAotea Centreで開催され、参加者 220名、オンライン参加者50名(開催国ニュージーランドからの参加180名)だった。
日本からの参加者は計 7名(発表、オンライン発表、オンラインposter発表各1名) 、各国の制度の整備状況や特に現状の課題などが共有された。

9月4日(月)
マオリ族の方々による荘厳なOpening Ceremonyで開会された。
午前中は、ニュージーランドのAir forceやニュージーランドの宙女(WIS:Women in space)の活動報告発表があった。
午後一番のsessionは、STEM分野において多様性と包括性を確保することを目的とした取り組みについての、当事者(イギリス人のゲイの男性)やNZ Defence Forceの女性登用のための状況と活動、ニュージーランドにおいて、大学教育におけるMāori(マオリ)の参加を促進するための取り組みについての発表の後、パネルディスカッションが実施された。ジェンダーギャップ指数が4位であるニュージーランドでも、伝統的に男性の領分と思われている分野では、まだまだ工夫が必要だと考えられていることと共に、男女だけではないDE&Iの重要性を認識した登壇者選択となっていると感じた。
夕方のポスターセッションでは、女性科学者の会・山本真紀さんから、「日本女性科学者の会(SJWS)の活動について」と「科学教育における女性科学者の貢献」の2件の発表があり、SJWSの活動についての発表では、日本の女性研究者の現状及び課題に対するSJWSの学術的活動や女子児童生徒への啓発の取組みについて紹介がなされ、科学教育の発表では、我が国の子どもたちの理科離れに対する国の施策や発表者の取り組み、SJWSにおける活動を通してどのような教育が必要か提言がなされた。

9月5日(火)
女性のキャリア形成上の課題を整理して、女性技術士の会・飯島玲子さんが発表し、アンコンシャスバイアスが女性の技術系への進出を妨げていることなど、問題点を共有できた。他の発表からも、ニュージーランド並びにアフリカを含むすべての国々が女性科学技術者のキャリア形成のパイプラインの分断を問題と考えていることをあらためて確認できた。
女性科学者の会・成田麻未さんからはご自身の子連れ学会参加の経験を交えた日本のダイバーシティ状況変化についての発表があり、会場の共感を呼んでいた。

9月6日(水)
様々な分野の結論としては、小さな違いはあるものの皆同じ問題(パイプライン、グラスシーリング、そもそもの男性社会の中での生きづらさ)を共有しつつ、そうは言っても少しずつ変わってきているので明るい未来に頑張ろう!という前向きな発表が多かった。そして、女性がSTEM分野にさらに進出すれば、イノベーションが起き世の中が良くなるはず、という結論だった。
ニュージーランドに関しては、原住民のマオリ族、移民、欧米から元々の移住者の中での確執や格差があり、多様性の構図は、日本よりずっと複雑なようであった。

【所感】
・今回はニュージーランドの発表者が多く、前回Awardを受賞した日本のPanel Discussionも実施が認められなかったのは残念だった。今までICWESへの参加が低調だったニュージーランドにとっては、国内の女性技術者、科学者のネットワーキング活動には非常に有用で、その効果は大きいようにも感じた。
・INWESのAwardもディナーの席上で華やかな雰囲気で受賞者の笑顔が印象的だった。
・例年実施されているYoung Women’s Science Campが今年半日のオンラインになってしまったのは、主催する韓国で、政府からの助成が打ち切られたためとのことだった。
・アフリカからの発表が増え、次回のICWES20主催予定のフィリピンは、おそろいのスーツやドレスを新調して、3年後の開催の宣伝に余念がなかった。INWES全体としては、会主催地の偏りがなくなり、女性技術者科学者のネットワークがバランスよく広がっており、日本としてもその中でどう対応、プレゼンスを示していくか、引き続き検討が必要だとは感じた。

おまけ
毎日タワーの色が変化していた様子、色の意味は分からず仕舞い

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